プログラマの特権を活かして「こっちの方がいいじゃん」と思ったら仕様書にない内容を勝手に付け加えて、あとから「どう?」なんて見せたりしていましたからね(笑)
「自分は◯◯担当だから」みたいな認識なんてなかったし、音楽もプログラムもゲームデザインも、全てお互いに口を出し合ってました。そうやって意見して、向こうが「いや、そうじゃない」と返してきたら、一緒に考えればいいんです。そういうやり取りの過程こそが、僕は本当の意味でクリエイティブだと思ってます。
ポケモンも世界中で何百人が関わる規模になり、分業をしながら作っていく体制になりました。でも、少人数のときには、分業はしなくていいと思いますよ。その人数であれば全員が全部の担当だという勢いでやっていた方が、絶対に面白くなります。
ゲーム業界で働きたい人なら、ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』とホイジンガの『ホモ・ルーデンス』は読んでおいたほうがいいと思います。共通言語を持てるので、「ここ、”偶然”の遊びを足したいから、ルーレット入れようよ」みたいに議論のときに使えますしね。

シオンタウンのテーマ 高音質 GB/GBC/GBA版

(Source: youtube.com)

例えば、ロジェ・カイヨワが『遊びと人間』で、遊戯を「競争」「偶然」「模倣」「目眩」の4つに分類しているでしょう。これで、実際に「遊び」はほぼ説明できますし、個人的にはゲームではこの4つのどれが欠けても面白くなくなると思っています。
個人的にオススメなのは、「声」ですね。人間の声って色んな音が出せるので、録音してサンプラーにかけるとかなり色々なことができます。何なら、みんなで歌ったっていいと思いますしね。
ゲーム音楽本来の面白さは、プレイヤーの操作に合わせて音楽が変化していくところだと思います。例えば、ダンジョンで地下に下がるごとにどんどん音が低くなっていくと、プレイヤーが不安をかき立てられると思いませんか。あと、効果音も大事です。例えば、敵がしている動作なんかは、効果音を上手く使うだけで直感的にわかったりします。
田尻について言えば、やはりライターとして糸井重里さんの下で働いていたりしたので、新しい言葉や概念のような哲学的なことにも非常に熱心でした。実際、ゲームの製作者には、そういうのが好きな人は少なからずいますよ。
音楽の面白いところって、特別な空間を生み出せることなんです。もし例えば、沖縄県そのままの場所を描きたいなら、そういう音楽をかければ沖縄にいる気分になれるでしょう。でも、ポケモンが描くのは、たとえモチーフが日本やフランスのような具体的な場所であったとしても、見たことのない場所なんです。だから、そのまんまの音楽を使ってはいけないと思っています。